私は今空っぽ。
母でもなければ、妻でもない。
ただここに存在している。
ここにいて波の音を聞き、カラスを眺め、時間の流れが止まったかのような空間にぼんやりと座っている。
アラビア海に面したリゾートのすぐそこに物売りが布を広げている。
風に乗ってからすが空を舞っている。
私は私という役割をそっと脇において空っぽでいる、この時間を楽しんでいる。
ここではあらゆるものの枠が外れ、ただ広がっていくだけ。一つ一つ私が作ってしまった枠を外していく。
女性という枠。人という枠。日本人という枠。母親であるという枠。妻であるというう枠。私という枠。
すると突然目の前にソースが現れる。それは滝が流れるように見えたり、光の塊のように見える。
そしてそれも私なのだとわかる。
私にはかけたものなど何もない。全て今ここにある。
ただ存在する。そこに全てがある。